予備試験を地方で独学受験やってみた。そして受かった。

予備試験を、東京から遠く離れた地方で、予備校の答練を使用せずしました。

2018年予備試験口述試験、刑事、再現解答(刑法、刑事訴訟法)

 

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口述試験直後に書いていた、下記の記事を公開します。かなり詳細に記述しているので、後半は、noteにて公開します。

 

 

当日の朝、口述試験会場の敷地内に入った瞬間、なぜか民事と間違って、民事の列に並ぶ。すぐに刑事の列に入ることに。

少し、動揺した。

体育館の番号札を渡され、その番号のパイプ椅子に着席。

私は、某室の4番であった。

6番中、4番か。まずまずの良い番号ではないか。

すぐ前の人は、二十代と思しき女性。(とても優秀な)学生さんかな。そのさらに前は男性。同室2番の人は、社会人の雰囲気がビンビン漂っている。スーツが紺色で、薄くストライプの模様が入っている感じ。どんだけ強気なんだよ。若手イケメン出世頭の商社マン、っという感じの、いわゆる「デキル男」感が半端なかった。トイレに立つ時に、顔がチラリと見えただけなのに。ただ、こういう人は、あまり口述試験官ウケは良くないんだよな、、、。

 

10時半くらいに待機室に呼ばれ、その後が意外と長かった。同じタイミングで待機室に呼ばれた人の中で、おそらく一番遅くに入室した。

11時頃だろうか。

やっと呼ばれて、部屋の前まで足早に移動。

ノックして、中から、チンと音がなったら入室するように指示され、指示通りに中に入る。

入室し、開口一番「失礼します」、席の横に立ってから「○室4番です、よろしくお願いします」

以下、現場の雰囲気(括弧書き)と質疑応答、私の心理状態(括弧書き)を記載します。一言一句正解ではありません。質疑応答のトータルは記載していると思いますが、質問が、若干、前後するかもしれません。

 

 

主査「どうぞ、お座りください」

私「はい」(主査、顔が近くないか?前のめりで、なんとなく近く感じる。やや圧迫される感じ。でも、想定内。副査については雰囲気把握、容姿はこの段階では分からず。)

主査「今から言う事案について、考えてください。AはVの自転車を盗み、無施錠で自分の家の敷地内に置いた。そして、その次の日、VはAの敷地内の自分の自転車をAに無断で持ち帰った。事案はわかりましたか」

私(即座に、堂々と)「はい」

主査  (私の即座の返答が意外、といった雰囲気で少しだけ間が空いて)「分かりましたか。では、Vには何罪が成立しますか」

私「はい、窃盗罪が成立します」

副査(軽くうなづく)

主査(『ほぅ』という感じ。これまた、すぐに答えられて意外という雰囲気)「窃盗罪…。窃盗罪が当然に成立すると」

私(自信満々で)「はい」

主査「窃盗罪の構成要件は」

私「他人の物を、窃取したこと、です」

主査「うん、他人の物…、もう少し正確に。条文上は」

私「他人の財物を窃取した」

副査(うなづく)

主査「うん、そうだね」

主査「では、この場合、窃盗罪が成立するにあたって何が問題となりますか」

私「はい、そもそもこの自転車はVの所有物であったので、自分のものを取り戻した行為が窃取したと言えるのか、問題となりますが、Aの一応平穏な占有を侵害したと言えますので、窃盗罪が成立します。」

主査「うん、自己の財物であっても他人の占有するものは他人の財物となる、というのは条文で規定されている?」

私(自信ないけどあった気がする。)「はい…、自己の財物でも他人の占有するものは他人のものとするのは…(副査がうなづくのが視界に入る)ある…、と思います」(最後の方、声が小さくなる)

主査「うん、まぁ、あるんだけどね。自信なさそうだからね」(少しだけ微笑む)

私「はい」(試験官が微笑んだぁ!ややハイテンション)

主査「では、この場合、犯罪を成立させるにあたって何が問題となる」

私「はい、そもそも自分の所有物であって盗まれたものを、取り返しているので財産権を侵害したかが、問題となりますが、すでにAの平穏な占有として、自転車が保管されているので犯罪が成立します。」

主査(ふーん、という感じ。何か考えている)「それは、どの部分の話」

私(意図が今ひとつ分からず)「Aが盗んでから平穏な状態で自転車を保管しているので、これを取り戻す行為は社会通念上、相当性を欠くといえ犯罪が成立します」(さっきと同じようなことを繰り返しているだけだな、私の答え、ちょっとズレてるか)

主査「では、本件について占有を侵害したというのはどう判断する。占有侵害したら、犯罪成立する?」

私「いえ、本件の場合、AがVから自転車盗んで、自分の支配下に移し、Vが取り戻すまで日をまたいでおり、平穏な占有がありますので、この場合の占有は刑法上保護され、犯罪が成立します」

主査「平穏な占有」(「平穏」を強調する)

私「はい、社会通念上、その占有を保護すべきである占有は、平穏な占有として保護されます」

主査「じゃあ、判例も、あなたと同じ立場をとってる?」

私「はい、同じような立場をとって…います」(ゆっくりと、思い出すような口調で)

主査「平穏な占有、と?」(また「平穏」を強調する)

私(主査と目を合わせず、考え込む感じでゆっくりと)「いえ、判例は平穏…とまでは言っていません」(平穏という言葉がネックになっているのか)

主査、副査、無反応でスルー(なんとなく、しらけた感じ)

(『この受験生、自分の知識じゃなくて試験官の聞き方、ニュアンスで答えを変えているな』と思われている感じ。私の心境、バレてる。)

主査「では、あなたの平穏な占有を保護する、という考えでは本件では、どういう要素を考慮して、犯罪成立を判断する」

私「取戻し行為が、自救行為にあたるか、ですか」

主査(力強い口調で)「いや、平穏な占有を判断するにあたって、何を考慮する」

私(それ、先に答えたやつと何か違うのか?)「はい、取り戻し行為が、占有を社会通念上妥当かどうかを判断するために、時間の隔たりを考慮します」

主査「うん、時間がどうだったら、どうなの」

私「時間が長ければ、平穏な占有が認められて、取り戻し行為に窃盗罪が成立します」

主査「うん、いつからいつまでの時間」

私(『えっ、こんなの何か問題になる?』)「Vが自転車を盗まれてから取り戻すまでの時間、です」

主査「うん、じゃあ、Vがずっと盗難に気づかなくても、その時間?」

私(即座に切り返し)「いえ、Aが盗んでから、Vが取り戻すまでの時間、です」

主査「うん、それもおんなじだよね。Vが気づかなくても、その間、時間が経っていたら成立する?」

私(即座に切り返し)「いえ、Vが気づいてからの時間、です」

主査(気づいてから、という言葉に即座に反応し)「Vが気づいてからの時間、と」

私「はい」(これか、!)

主査「本問の場合、Vは気づいてからすぐに取り戻しているね。この場合は、平穏な占有と言える」

私(圧迫感あるなぁ、ここで私は撤回すべきなのかぁ?)「いや…、すぐに取り戻しているので、占有に保護が社会通念上相当とは言えない…、と思います」

主査(キタキタ、という感じで)「うん、それじゃあ、さっきあなたは社会通念上、占有保護すべきだと言ったけど、それは違うの」

私「いえ…、やはりAは自己の支配下に自転車を置いて、保管していますので、この占有を保護するのは社会通念上相当であると思います」

(キツくなってきた。主査の聞き方のニュアンスで答えを変える私の姿勢が仇となっている。でも、まだ想定の範囲内。)

主査「うん、じゃあ、時間の他に考慮要素はない」

私「場所が離れているか、ということ」

主査「うん、場所が離れていたら、どうなの」

私「場所が離れていた場合には取り戻しが即座には困難となりますので、Aの占有が保護され、窃盗罪が成立し易くなります」

主査「うん、他には、Aの自転車の確保の状況とか」

私「はい、Aは自分の家の敷地内に自転車を置いており、通常他人が持ち去らない場所に保管しているので、これも占有を保護する事情となります」

主査「Aの、そういった保管状況も、考慮要素になる、と」

私(力強い口調で)「はい」

 

主査「じゃあ、また全然別の事例。AはVに金を貸すことを懇願され貸した。その後、AはVに返済を催促したが、Vは金を返さず『そんなものは借りていない』と金を借りたことすら否定した。そこでAはVに対し、『金を返さないとぶっ殺すぞ、慰謝料としてさらに五万円払え』と言ってVに15万円を払わせた。事案は分かりましたか」

私(即座に)「はい」

 

ーーーー続きはnoteにて公開

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予備試験口述試験、民事 再現解答はこちら

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口述試験の結果が出ました

遅ればせながら、口述試験の結果が出ました。

論文試験同様、成績通知まで、待つつもりだったのですが、受験番号を報告していた某予備校から、合格者対象のメールが送られてきて、結果をフライングゲットしてしまいました。

 

まあ、予備校も、まさか本人が確認していないとは思っていないでしょうから、悪気はなかったのだと思います。

 

予備試験合格者の親睦会等、予備試験合格者の皆さんは行くのでしょうか。

私は、迷っています。

行った方が良さそうだとも思いますが、何せ出不精で。

そして、あの感動的な口述試験の体験の記憶が、薄れそうになっていることに危機感覚えています。

 

口述試験の再現、アップしておこうかなぁ、とこれまた迷っております。

再度読み返し、思い出に浸っています。もう二度と、あんな体験できないのだろうな、と思います。

論文試験の成績

口述試験遠征から帰ってきて、論文式試験の成績表をまじまじと眺めました。

悪い、悪すぎる。

 

憲法D

行政法A

民法D

商法F

民事訴訟法B

刑法C

刑事訴訟法C

一般教養D

法律実務A

 

刑事系は、自分ではかなりできたと思っていたのに、いまひとつの評価となってしまい、口述まで、結構勉強した。

まず、手続きを一通り見直し、刑法各論の判例集をざっくりと二周した。

そしてまた手続きを、条文をふまえて、しっかりと読み込んだ。

口述は、まずまずの出来だったと思う。

民事も、手続きを見直し、何より要件事実の本を何度も読み込んだ。

まずまず、出来たと思う。

 

口述試験の帰り道

口述試験の帰り道、地方の独学受験の私は、当然一人で、新浦安駅まで歩いていました。

そういう人、他にも結構な数いたので、別に私だけが特別なわけではないのですが、大学生らしき若い人が、二人組になって試験の感想を言いながら帰っているのを見ると、羨ましいなぁ、と思いました。

 

1日目刑事午前組としては、私も、彼ら彼女らと同じ試験を受けたわけだし、その会話で当然なされる、口述試験の内容と感想が気になる。

後ろから、ついて行って、彼ら彼女らの会話を聞いていました。

 

予断排除とか、恐喝罪についての問題について、ネタにしていて、すごく興味深かったです。さすがに、新浦安駅まで歩く間ずっとすぐ後ろで聞いているのはあやしいと思って、途中で、離れました。

 

でも、すごく有意義な時間でした。

若くて優秀な人が、こんなに多く集まることもなかなか無いのだろうな、と感動に浸っていました。

そして、刑事、民事で、口述で聞かれたことで自信の無かった問題については、しっかりと家に帰って調べました。

すごく良い勉強になりました。

添えぞれの科目につき、僅か20分程、法律家の先生とお話をしただけなのに、丸一日みっちり講義を受けたような充実感がありました。

感動します。

口述試験 2日目 民事

口述試験の2日目は、午後、民事でした。

試験の順番は、まさかの一番。

最前列に並ばされて、パイプ椅子に座った瞬間から臨戦態勢に入りました。

隣に座っていた、男の子も持ってきた資料や六法を必死でめくっていました。

そのことはいっこうに構わないのだけれど、こっちの様子をうかがったり、心臓をバクバクさせるの、やめてくれない?、と思った。

こっちまで無駄に緊張してしまうじゃん。

お互いに一つの椅子を取り合う関係にもないんだし。状況を取り違えていない?、と。

しかも、私たちは、部屋が違うから同じ試験官にあたらないよ、と。

どちらかというと、同じ時間に試験を受ける者として、連帯意識が私はありました。

 

発射台では、少しマシになりました。

試験室まで、連れていかれて、皆が一斉にノックして、一斉にそれぞれの部屋から、チン、となるので、正直言って自分の部屋からの音なのか、分からない。

でも、そんな事には一切構わず、入室。

あれ、1日目の戦乱の残骸みたいな雰囲気が部屋に充満していない。

そうか、これが1番目、ということなのか。

 

口述試験 1日目午前 終了直後

1日目の午前の口述が終わってから、12時過ぎまで、待機室で待たされました。

私は、後の方だったので、30分ぐらいしか待ちませんでした。

ただ、その雰囲気が独特でした。

試験前の、体育館での並びとは異なっていて、体育館での前後が待機室での左右になる形式でした。

すると、私のすぐ先に(同一の試験官にあたって)受けた人が右側に、すぐ後に受けた人が左側にくる関係になります。

私は、発射台で待たされる時間が、一緒に移動した、どの受験生よりも長かったので、直前の人が長引いているのかな、となんとなく感じていました。

 

試験室に入室して、質疑応答が始まった瞬間、そこには見たこともない世界が広がっていました。それが何より衝撃的でした。

俗世間とは隔離された世界が広がっていました。

そして、主査と副査の口調や雰囲気から、その部屋で激しい戦いが繰り広げられた後の残骸のようなものをヒシヒシと感じました。

前の人(前の三人のうち誰か)に対して、キツく問いただしたのに、私に対して後半に入って疲れてきたからという理由で問いたださないのは不公平だ、という感覚から、キツく問いただされているようにも感じました。

とすると、先の誰かが、激しい戦いを繰り広げたのだろうか、と先の三人に思いを馳せました。

あの2番目の、ザッツできる男、みたいな人とか…と思いました。

 

 

ただ私は、終了後は、あんな知性と人間愛にあふれたお方がこの世に存在しているのだ、というまぎれもない事実に感動し、もっともっと頑張らなくては、と励まされました。そして、試験官の熱い情熱を感じた会話の余韻に浸っていました。

すると、すぐ右隣の受験生(若めの女性)が、こちらを気にしているようでした。「あの人、出来はどうだったのかなぁ」と思っているのが、明確に伝わってきました。体育館では、賢そうに見えたけれど、待機室では、ややイラついているようにも見えました。

 

そうこうしているうちに、私のすぐ後の人が着席しました。

パイプ椅子にもたれかかって足を投げ出し、ちょっと腐った態度でした。

すると、彼も、私の顔色をうかがっているようでした。

彼も、「あの人、出来たのかなぁ」と考えているように感じました。

 

確かに、一人の試験官の同じ質問に対して、順番に6人の受験生が答えるわけだから、試験官の受験生に対する心証は、前の人の出来不出来に多少なりとも左右される、と思えます。

そのことが、前後の受験生の共通認識となっているようで、全く会話していないにもかかわらず、意思疎通し合っているように感じました。

 

お互い論文式試験に受かっているから、努力した者同士リスペクトし合っている、というのと、この少人数の中で多少なりとも(成績というより心証の点で)相対評価となるのは、シビアだよね、という感覚が相まって、不思議な空間となっていました。

 

午前の試験終了後の待機室で、皆が座って黙って勉強している姿を見て、私の仲間が全国にこんなにたくさんいたんだ、と感動しました。

兄弟が一度に(15室×6人-1人(自分))89人増えた感覚を覚えました。

 

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口述試験遠征から帰還

長い旅でした。

生涯の中でも、なかなか出来ない体験ができました。

今まで見たことにない世界を見させてもらいました。

こういう旅なら、毎年したい、とまで思わせてもらいました。

 

予備試験論文試験に合格した人が、二百人以上いっせいに集まる空間もなかなかありません。

 

勉強に打ち込んできた人達が、いっせいに集まると、こういう雰囲気になるのか、と感動しました。

それぞれが自分のことに打ち込んでいて、それでいて他の受験生を互いにリスペクトしている感じが伝わってきて、共同体意識を感じました。

 

具体的な口述の質疑応答及び、現場の思考、主査副査の雰囲気については、別途、記事で記載します。

 

これがまた、小説並みに面白いんだ。

他の受験生、全員、再現をアップして欲しいな。

 

 

改めてこの場で、口述試験を受けられた方に、敬意を表したいと思います。

 

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