おさん(by太宰治)を読んで
「小説としての体裁を保ちつつ、自分の感性や考えを描くこと」、
その点が、太宰治の作品においては秀逸だと思うのです。
「おさん」においては物語が、女性である「私」により語られる点で一貫しています。
そして、通常ならば「私」とは筆者のことだと読者はすぐに察するのですが、ここでは太宰治が男性であることから、彼が架空の女性になりきって書いたのか、はたまた女性である「私」に男性である彼自身の思想を語らせているのか、と考えることになります。
その設定において既にフィクションの要素があり、後は(実際に存在したかは別として)現実を描くことで物語りが成り立っている、と感じました。
そして、その現実の描き方においては、That's太宰、といったものがありました。
特に、人間失格を読んだ直後におさんを読むとなおさらそのように感じました。(ちなみに「おさん」は「斜陽」と同じ文庫本に掲載されていました。)