物語が思い浮かぶとき
底まで見える川の清流に銀色の小魚の大群が、さーっと流れてきて、
今は、眠いからまた後で捕まえればいいや、と思うのだが、一眠りして起きてみると、
その魚が捕まえられないのはもちろんのこと、
何か、すばらしいことに出会ったということすら、忘れてしまうのである。
万が一、すばらしい何かのかけらを掴もうとする努力ができ、そしてそのかけらとなるようなものを掴んだとしても、そのかけらが、どんな全体のどの部分か、まったく想像がつかず、途方にくれるだけなのである。
「あぁ、あの時、そのかけらだけでも書き留めていれば。」と、悔やまれてならないのだが、そのときは睡魔が勝っていたのである。
せめてもの救いは、そのとき寝起きの気分の悪さを甘受してまで書くほどのことではなかったのだろう、と思えることである。