芥川賞受賞作「乳と卵」(by川上未映子さん)を読んで
本日、芥川賞作家である川上未映子さんの芥川賞受賞作、「乳と卵」を読み終えました。
世間で、大きな賞を取った作品というものは、概してがっかりさせられることが多い中で、
この作品はなかなか面白かったです。
語り口が関西弁であるため、やや読みにくさはありましたが、それ以上に内容が興味深かったです。
一言で言えば、一個人として考えた時の、女性の性について登場人物(主人公の姉や姪)の言葉を通して筆者の考えを述べているように思えました。
姪の、大人の女性になることの戸惑いや嫌悪などは、女性ならば誰しも一度は経験したことがあるのではないか、と思い、共感できる箇所です。
また、女性の生理現象などについても、姪の視点から素朴な疑問として描かれており、なかなか面白かったです。
読後感として何かが残る、というよりも、読んでいる過程に物語の魅力を感じました。
本書に掲載されている短編、「あなたたちの恋愛は瀕死」も、最後のシーンはともかくとして途中の主人公の心境の描写が、興味深かったです。
川上さんは、(文芸誌に載っている賞の選考委員としての)写真でしか見たことがないのですが、
良い意味で小説家らしくないな、というのが第一印象でした。
小説家というと、活動の性質上一人でこもりがちになることから、外観にもそういう雰囲気が出る人が多い中で、川上さんは、容姿を世間に見せて活動をしてそうな雰囲気があったのです。
単に、美人というよりは、パッとしていて、個性がはっきりしている印象を受けたのです。
そういう見た目を連想して、物語を読むのもなかなか面白かったです。
面白い物語、というのは、話の組み立ても大事ですが、話の中で筆者のメッセージ性が強く出ているものだな、と思います。
「自分の人生をかけて、なんとしても書かねばならない」という意気込みで書いた作品は読者にも伝わるものがある、と思います。
逆に、文芸誌に載っている作品でプロの作家によるものでも、「何でこの人、こんなつまらないことを延々と書いているんだろうな。そこまでして原稿料欲しいのかな」と思わざるを得ないものも相当数あります。
やはり、物語を作品として世に出すからには、何としても書かねばならぬ、と思って書いた作品を出すべきだなぁ、と思います。
また、何よりも読者がそれを欲しています。